こんにちは!7回目をお送りします。
前回は、シドニー日本人学校を特色づけている「交流授業」についてお話しました。インナークラスの子どもたちと、日本人学級の子どもたちとのミックスレッスンを図工と音楽と体育で行う授業です。
とても魅力的な取り組みながら、それぞれの文化のちがいや、教師の言語能力などから実に難しく、さんざんな授業であることをお話しました。
しかしそのなかで、必死に知恵をしぼりながら、どちらにとっても有意義な授業をつくろうと努力を続けたことも・・
今回は、その一つの答えとしてのティーム・ティーチングの導入のお話です。
結局、交流授業は、日本人教師一人一人の力では困難なことだったと思います。オーストラリアの子どもたちにとっては、自分の担任の先生がそばにいてくれることが必要だったのです。自分たちのことをよくわかってくれている「味方」としての担任の先生。その先生がそばにいてくれたら、いつも叱られてばかりの自分たちではないはず・・。
交流授業の内容がだんだんよくなっていくのは、わたしたちが2年目になってティームティーチングが導入されるようになってからです。インタークラスの担任が寄り添っていてくれる、またあるときにはインタークラスの教師がある単元の主導権を握る。こうしてはじめてインタークラスの子供たちも元気が出てきたように思います。
ティームティーチングの一つの例として、6年生の体育の授業を取り上げます。これは、1994年当時のインタークラス担任のエイコット先生が中心になり、我々日本人学級の担任はサポートするという形で行ったものです。
エイコット先生指導のダンス
「オーストラリアン・フォーク・ダンス」です。
まず最初にインタークラスの子どもたちがデモンストレーションしてくれました。
女子の数があまったので、エイコット先生は見学しているインタークラスの男子をひとり、その女子のパートナーにされました。その日は男子は男子、女子は女子でパートナーをつくっていたので男女で手をつなぐのは彼らのペアだけになります。
日本ならばすぐにひやかされたり、本人がいやがったりしてひともんちゃくおこるところですよね。しかし、その男子はなんともないようにすっと列に入り、ダンスを伸び伸びとおこなっていました。
非常に大人に見えます。
その様子をみている日本の子どもたちは、その男子の姿にとても感心をしていました。
ダンスの授業では、毎回インタークラスの子供がステージに上がって手本の演技を見せてくれました。いつものように男子と女子がいっしょにやります。全然はずかしがりません。
彼らは、実際に練習をするときにもあれこれと手をとって教えてくれていました。
とても誇らしげに一生懸命にダンスを教える子どもたち。。
インタークラスの担任が主導権を握った授業では、インタークラスの子供たちは実にいきいきしていました。また、活躍の場が与えられ、それを見て日本の子どもたちが感心したり、見直したりすることも多くありました。
自分の担任の先生が、日本人にダンスを教えてくれる。そしてとの手伝いを自分たちがする。ティーム・ティーチングによって、インナークラスの子どもたちの良さがしっかりと日本の子どもたちに伝わる。そして日本の子どもたちがインナークラスの子どもを見直す。
こういう意味で、ティームティーチング制の導入は、これまでの十何年にも渡る教師たちの努力から生まれてきたものであり、画期的なことでした。
インタークラスの子供たちを活躍できる場に引っぱり出したい。そして日本人学級の子供たちに見直させたい。そうすることを通して、お互いが認めあえるようにしていきたい・・・。
私達は、20年前、そのような願いを込めて交流授業を行ってきました。帰国して8年後、一度シドニーに「里帰り」して、交流授業の様子を見せていただきましたが、ティーム・ティーチングによる交流授業は連綿と続けられていて嬉しく思ったことを思い出しています。