わたしは、とんでもないところにきてしまった
いよいよやってきたシドニー日本人学校である。見るもの、聞くこと何でも珍しい。
赴任する前は、「シドニー日本人学校」と言うくらいだからきっとオペラハウスやハーバーブリッジの見えるシティーど真ん中にあるのだろうと思っていた。
ところが意に反してつれていかれるのは起伏の多い丘。しまいにはどこまでもうねうねと続くユーカリの海を右に見、左には馬や羊、ろばのいる牧場を見ながらだんだん森の奥深くにつれていかれるに及んで「ワタシハトンデモナイトコロニキテシマッタ」と一人単身で来た身を後悔したものだった。
私の家の裏の通りの様子。実際にはこのうえに家があるのだが、角度を変えたらこんな絶望的に人気のない岩とブッシュ。
それほど森の中にあるので、周りは手も付けられていないような自然でいっぱいだ。
今はゴルフ場[i] になってしまったが、我々が1年目までは学校のすぐ裏はどこまで続くかわからないような([ii] ブッシュであった。
そこからカンガルーが出てくるのを何度か目撃した。
カンガルーくらいならまだいいが、夏の暑い日には、1メートルはある大とかげ!(ゴアナと言います)がユーカリの木から降りてきて、教室の前をゆっくりはっていくこともあった。
- 周りをとりまいてあわて騒ぐ我々教師と子供たちを前に、「うまそうだな・・」とつぶやいた当時3年目の教員がいた。
- [i] テリーヒルズ・カントリー・クラブという。端っこの方にある教室からフェンスを隔てて目と鼻の先で、おとうさん方がドライバーを振り回していらっしゃる。ある教室では授業中の教壇からまともに見えるので、そのたびにフェンスを越えていこうとする教員もいたとかいないとか・・・
- [ii] ブッシュ。これから何度となくでてくる言葉である。森・林を意味する。「森」とか「林」などというより、一言「ブッシュ!」と言った方がよりはっきりイメージできるだろう。そう、そのイメージである。ユーカリを代表に、バンクシア、ハイケア、ワトルなどの潅木で構成され、この中に分け入っていくといろんな自然の発見があってとても楽しい。
バンクシア
ハイケア
ワトル(ミモザ、アカシア)- 「ブッシュ・ウォーキング」いわゆる山歩きである。ブッシュ・ウォーキングについては別稿で述べます。
私の家から5分も離れていないブッシュで。
豊かな自然に囲まれた学校
朝早くには、真っ白なオウム(クッカトゥー)が何十羽も降りてきて、芝生の運動場で虫をついばんでいる。
また、我々の研究紀要であるシドニー紀要に「世界で一番美しい鳥」と紹介されている「ガラ」、世界一大きなワライカワセミの「クッカバラ」、七色いんこの「ローリーキート」などの愛くるしい鳥たちがたくさんやってくる。
クッカバラ 30cmくらいある。庭の物干し竿に「ぼとっ」と止まっている。
北のブッシュはそのままクーリンガイチェイス国立公園に連なっている。
オーストラリアでは比較的若い3億年(!)の岩肌にアボリジニたちが残した多くの[i]岩絵を見ることができる。
学校前のBooralie Roadは、車道の横に並木で隔てた道がつくってある。人の通る道ではない。馬が歩く道だ。
牧場がこの通り沿いにいくつもあり、人々は自分の馬をこの牧場に預けて飼育してもらっており、暇な折りには出かけてきてひがな一日愛馬にのって遊ぶ。
なんと優雅なことだろうか。
- 馬に乗った人は結構大きな通りでも見かける。交通法規には、「馬にであったら」などという注意事項があり、免許のテストにも出た。また、馬具専門のお店などもある。
このような環境の中で、日本人400人、オーストラリア人100人が勉強しているのだ。
- [i] シドニー一帯の岩肌には、約5000年前から200年前くらい前までの岩絵がある。ワラビーやエミュー、魚やブーメランをもった狩人などが彫られてる。
【編集後記】
いよいよ日本人学校にやってきました。
本の方では、ここに行き着くまでにおとなりの方との交流や、英語についての大間違いなどどたばたなことがいろいろと語られています。
ノーザンテリトリーで、観光業に従事するアボリジニ
数万年前から数十年前にわたる岩壁画
アボリジニの岸壁画のことがでてきますが、アボリジニとその文化についてはとても深いものが在り、滞在3年間の間に20年後の今に続くとてつもなく大きな学びをいただきました。これについては下記の本に詳しく述べています。