大好き!ヨーコ先生 第3回 「ほめて育てればいいの?」

昼休み

主任のマキが教室で子供たちの日記を見ていると、3年2組のヨーコのクラスの子どもたちがやって来ました。

「あら、リョータ君、ユキちゃんも。どうしたの?」

「先生、ヨーコ先生が変なんです」

「変?」

「なんかぁ、なにやってもぉ、ほめるの・・・」

「いいことじゃないの。みんなもほめられて嬉しいでしょう?」

「ちがうの!マキせんせ。」

 

ユキが腕をぶんぶん回しながら言います。

「あのね。ノートにね。書いたらね。ほめるの。」

「?」

「・・・あの、ノートに黒板の字を写してるだけなのに、上手ねぇとか、えらいねぇなんです。」

お姉さんっぽいユリがフォローします。

「そうなの?それは困ったねえ。あんまりうれしくないね・・・」

マキ先生にはちょっと思い当たることがありました。

 

・・・

5時間目、マキ先生は子どもたちに計算問題をさせている間、隣のヨーコの授業をそっと見に行きました。

「ははぁ、たしかに・・・」

ヨーコのクラスは図工の時間で、ヨーコは絵を描く子供達の机の間を回っては一生懸命にほめています。

 

「まぁ、上手ねぇ」

「あら!ユキちゃんも上手!

「わ!じょうず〜!」

「あらあら!リョータ君も上手!」

 

ヨーコは髪を振り乱して子どもを手当たり次第にほめています。

 

「あちゃー・・・」

マキ先生は頭を抱えました。

「たしかに、子どもは叱るよりほめられる方が頑張る気になるわよって言ったけど、これじゃ・・・」

マキ先生は、リョータやユキちゃんやユリが困っていたことがよくわかりました。

・・・

放課後

職員室で,マキはヨーコに今日見たことを話しました。

「なんだか,やたらとほめてたわね。」

「はい!昨日マキ先生からしかるよりほめて育てるほうが子どもはやる気になるって聞いたので,今日は,いっぱいほめました!」

「そう・・・」

マキはどうしたものかという顔で,目をくるっと一周させました。

 

「・・・?マキ先生どうしたんですか?」

「あのね。ヨーコ先生は,図工で子どもの何をほめたの?」

「え?あの,上手だねって・・・」

「何が上手だった?」

「何って・・・えーっと・・・・」

 

マキはヨーコに自分のクラスの子どもが描いた絵を見せました。

「わー上手!」

「どこが上手?」

「この海の色がすてきですね。いろんな青が使ってあって,きれい。白い絵の具でてんてんと書いてあるから水しぶきの感じがよくでてますねー。」

マキはにっこりしていいました。

 

「ほら。ヨーコ先生。今,立派にほめてるわよ。」

「え?」

ヨーコはきょとんとしています。

 

「何がどうだから上手だってひとつひとつ言えたでしょ。それがほめるってこと。」

「はぁ・・・」

「あのね,いくら上手,上手っていわれても,どこがどんなだから上手なのか言ってくれないと,言われた人は何で褒められているのかわからなくてとっても困るのよ。」

「そうですかねぇ・・」

マキはヨーコに向き直りました。

 

「あ,それjはそうと,ヨーコ先生,今日はとってもきれいよ。」

「ほんとですか!?」

「そうよ。今日はとってもきれい。」

「わあ,うれしい。ねえ,どうしてですか?どこがきれいなんです?」

ヨーコはわくわくして聞きました。

「そうねえ。きれいなのよ。きれい。今日はきれいよ~」

「もう。先生,もったいぶらないで教えてくださいよぅ。きれいきれいって,どこがきれいかわからないと困りますぅ」

「ほらね。困るでしょ?」

「え?」

またまたヨーコはきょとんとします。

 

「ヨーコ先生は今日の図工の時間,子どもたちに上手だ上手だっていってたけど,子どもたちは何が上手だかわからなくてとっても困ってたのよ。いまのでわかったでしょ?」

確かに。きれいだっていわれたけど,何がきれいかわからないので,あんまりうれしくありませんでした。(あ,そうか。上手っていわれただけじゃうれしくないんだ・・・)

 

「特に,図工とか音楽とかでは,かんたんに上手っていう言葉を使わないようにしないと。それよりも筆の先でていねいに塗ってるね」とか「色と色が重なっていてきれいな別の色ができたね」とか具体的にいってもらったほうがうれしいのよ。」

「マキ先生,ありがとうございました。よくわかりました。」

ヨーコはにこっと笑うと,教室に上がります。職員室からでようとして,入れ違いに先輩のユーイチが入ってきました。3年3組の担任です。3年目の先生で,ヨーコの1年先輩です。

「あ!ユーイチ先輩。あの,えーと。先輩の今日のネクタイ。少し短めでよれっとしているのがすてきですわ!それじゃ!」ヨーコは張り切って職員室を出ていきました。

 

「マキ先生。なんですか?ありゃ」
ネクタイをしめなおしながら,ユーイチがマキの向かいに座りました。
「ちゃんとほめる練習をしてたのよ。」

「はあ?」

ヨーコの日記

今日はまた大事なことを学んだ。

「上手!だけじゃだめなんだ。何がどうだからじょずなのか。それをいわなきゃ。

できたら上手という言葉を使わないでほめるのがいいんだそうだ。

この色の組み合わせは,よく目立っていいね,みたいに具体的にいわなきゃ。

明日は,具体的に言葉をかけよう。

翌日

マキがそっと3年1組をのぞくと,ヨーコが一生懸命にほめています。

「リョータ君。線からはみでないように丁寧にぬってるねえ。」

「まあ,ユキちゃんはこんなに細い線がひけるのね。すてきね。」

「ユリちゃんのパレットにはたくさん色が出てるね。だから画用紙の絵がこんなにたくさんの色でできてるんだね。」

みんなにこにこしていました。(よし!やったね ヨーコ先生)マキはそっと教室を出ました。

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